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レポート

HAE29EC、すばらしい追尾精度を約束するポータブルパッケージ
SKY & TELESCOPE, MAY 2024


ガイド無しで撮った干潟星雲M8。口径20cm F6.3のミードACFをHAE29ECに搭載。同システムで1分露出したところ、47/58カットで丸い星像を捉える...ピリオディックエラーを事実上無くした証

星空の観測

いつものとおり、夕刻、詳細なアライメントを行う前に三脚を設置し、その上に望遠鏡やカメラを搭載したHAE29ECを搭載。マウントと三脚がとても軽量のため、iPolarで極軸合せを済ませた後に望遠鏡架台を搭載すると、慎重に合わせた極軸が外れてしまう恐れがある。

HAE29ECに組み込まれたストレインウェーブギアのおかげで、マウント上の機材重量バランスがとれてなくてもさほど問題はないが、重量バランスがくずれ、ある特定の角度で起こるかもしれない事故を回避する効能もある。いずれにしても、ストレインウェーブギアの場合、噛合せを解除するクラッチ機構がないため、重量バランスを正確にとるのは少し難しい。赤径/赤緯のどちらも、ハンドコントローラのボタンか、ソフトウェアで駆動する必要がある。私の場合、木製のダボの上に望遠鏡とアクセサリーを載せて、重量バランスのとれた位置を決め、機材をマウントに搭載する前にマークしておく。駆動トルクの大きなストレインウェーブの特性により、カウンターウェイト無しの最大搭載重量を超えなければ、赤経軸の重量バランスをとらなくて済む。

極軸合せは、マウント北側の水準器に装着する付属のiPolarカメラで行う。iPolarは短い露出で北または南の極星近辺にある複数の恒星を記録し、iPolarのコントロールソフトが速やかにプレートソルブ (名の知れた恒星パターンを識別) を実行して、マウントの正確な向きを特定する。ユーザーは、画面上でマウントの回転軸 (+) が、極軸を示す緑の円の上にくるまで、マウントの高度ノブと方位ノブを調整する。iPolarは極軸合せを30秒内に追い込めるそうだが、この精度は今回のテストでも確認済。以上の極軸合せは5分もあれば完了する。

次は、ハンドコントローラでアライメントを行って、精度の高い自動導入を行う。Go2Novaハンドコントローラに電源投入後、日時、緯度、経度、地理上の位置を入力する。ハンドコントローラのボードに組み込まれた広範なデータベースから基準星を選び、ENTERを押す。マウントはその基準星に近づくまで、ヒューという低い音を立てながら毎秒6度で高速駆動する。

この後、ハンドコントローラのボタンでsynch to targetを選び、天体を視野中心に入れたら、ENTERを押して初期設定を行う。

HAE29ECには、one、two、threeの基準星で自動導入する。テストでは、two-star alignmentで目標天体を、カメラセンサーや、アイピースの視野に導入できた。two-star alignmentの導入精度は極めて高く、高倍率でも目標天体が視野中心に入る。





HAE29ECの極めて高い追尾精度は、赤経軸の高精度エンコーダーが寄与しているはずだ。口径71mm F4.9のWilliam Optics社製屈折望遠鏡から、口径20cm F4.9のAstro-Tech社製リッチークレチアン鏡筒まで、5分のガイド露出に失敗したことは一度もない。Phd2ガイドソフトに記録された追尾補正値は、マウントの搭載リミットを超えないかぎり、常に0.4~0.7秒に収まる。ガイド反応も、バックラッシュ無く、素早く、精度も高い。エンコーダー無しのストレインウェーブマウントも複数台テストしたが、いずれも数十秒角のガイド修正を要し、HAE29ECの修正量をはるかに超える。実際、アライメントを意図的に1度ずらし、恒星の軌跡を記録すると (画像参照)、突発的なエラーの無い極めてスムーズな線が描かれる。

観測性能

HAE29ECは経緯台としても簡単に使えるが、撮影用のカメラをアイピースに替えて楽しむときは、この経緯台モードがとても良い。装着したiPolarの下にある小さな水準器により、マウントの水準を正確にとれる。ハンドコントローラのメニュー項目をAlt-Azi Modeにセットしてから電源を入れ直し、取扱説明書に従ってマウントのゼロポジションをリセットする。基準星を選び高速駆動で導入、基準星をアイピースの視野中心に入れた後、赤道儀モードと同じようにsynch to targetを実行する。大切なことは、最初にマウントを北に合わせ、正確に水平をとることで、経緯台モードでの導入と追尾を良好な精度で行える。午後、口径90mm F13のマクストフに太陽フィルターを装着してHAE29ECで太陽を数回導入してみたが、いずれも太陽を正確に追尾する。小口径の屈折望遠鏡や20cm以下のカセグレン鏡筒なら、HAE29ECマウントとすばらしいコンビネーションだ。カーボン三脚をいっぱいに伸ばすと、座って観望を楽しむとき、小口径鏡筒に装着したアイピースがちょうど良い高さになる。

112.4kgある私のC11はHAE29ECの搭載重量をわずかに超えるも、問題なく追尾する。

HAE29ECをはじめ、どのストレインウェーブギアマウントでも、鏡筒の向きを手動で動かすことはできない。「電源を入れないときのマウントはレンガのようにびくともしない」とは、ストレインウェーブギアマウントの特徴を言い当てた表現。電源を入れないかぎり、いずれの駆動軸も動かない。バッテリーが無くなれば、撤収して観測をあきらめるしかない。以下、観望会で同マウントをポータブルなパワータンクで動かしていたときのこと。寒い夜空の下、一時間過ぎてもバッテリーは問題無く働いていたが、出力電圧が10.5ボルトを下回ると、マウントは追尾し続けるも、ハンドコントローラのコマンドが効かない。新しい電源に取り換えることで問題を切り抜けた。

まとめ

HAE29ECは多才な機能とポータビリティを兼ね備える。観測を終えてかたづけるときも、望遠鏡を外し、三脚をたたみ、ケーブルを外し、いっしょに車両の後部席に置くだけ。今回のテストでは、鏡筒を搭載したまま、三脚を閉じて後部席に置くときもよくあった。

20cmクラスのシュミカセもしっかりと搭載でき、正確に追尾できる。三脚をパッドケースに納め、コンパクトにパッケージされたHAE29ECは、機内にも持ち込める理想的なトラベルマウントだ。追尾精度が極めて高いので、単焦点鏡筒なら、オートガイド無しで楽しめるケースも少なくない。

ウォームギアで駆動するマウントを長年使ってきたが、HAE29ECのテストを通し、とりわけポータブルイメージングセットアップとして、ストレインウェーブギアマウントの将来を確信できた。

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